第3回 自分の都合で叱る親


子どもの勉強を阻害しているのが親の言動に原因がある場合がある。それは、親の短期的な欲求や、不機嫌な感情で子どもの熱心な努力をストップさせてしまう場合です。

 

私が20年以上塾で子どもたちを見てきてはっきりしていることがあります。そのひとつに親がこまごまと口うるさい家庭は一番ダメです。親自身の不安(子どもを思う気持ちからだと親は言いますが)を子どもに向けて解消する場合です。ガミガミ言って子どもにあたるそのような家庭の子は、多くの場合なかなか成績が伸びないそして、最終的には受験でうまくいかない。

 

数年前、これに当てはまる典型的な家庭がありました。その子は、なかなか勉強しない女の子でした。彼女は母親から毎日のように「勉強しなさい」と怒られ、テストの点が悪いと、時には足蹴りされ叩かれていました。私は彼女に勉強することの意味を繰り返し話し、勉強の仕方を基本的なことから教えました。そして、ようやく彼女のの中に勉強する意識が芽生え、机に向かった時母親は何が不機嫌だったのか、また口出しして言いました「そんな勉強で頭に入るの!」彼女のを折る、決定的な一言でした。

 

彼女はまた勉強しない子に戻り塾もやめてしまいました。その後、中学卒業まで4つの塾を変えたようです。これはもう最悪のケースでしたがガミガミ言う親は似たり寄ったりです。親は子どもの勉強を心配しつつも、期待も大きい。しかし、ほとんど99%の中学生からすれば親のそんな気持ちなんてわからないしもし分かっても、それで「頑張ろう」「勉強しよう」と本気で思うことはありません。

 

親があまりに感情的になったり、期待しすぎると子どもは大きく分けて3種類の反応をします。

①親の言うことに反発し、反対の行動をとる。

②親の言葉を聞き流し、親に背を向ける。

③親に気に入られようと、自分の気持ちにふたをする。

①と②は親が見てすぐにわかる反応であり思春期の子どもがとる健全な反応です。

③の反応は親には分かりません

 

むしろ親は自分の不安が解消でき、安心してしまします。しかし、これは最悪な反応です。子どもはいつしか自分自身を見失ってしまいます。そして、時としてウソをつくようになります。このウソは人を騙すという意味ではなく自己防衛のためについてしまうウソです。③の反応は親には分からなくても、塾では授業中の行動において、私にはすぐ分かります。一番顕著に出るのが、テストの自己採点です。間違っていても×をせずこっそり書き換えて〇をします。

 

これがひどくなると、「全問できた人、手を上げて」と言うと書き換えて〇をしたにもかかわらず平気な顔で手を上げます。心がゆがんできている証拠ですね。しかし、これは本人が悪いのではなく親の言動が子どもにそうさせているのです。

 

親の立ち位置というのはとても難しく、とても重要なのです。親がどんなに感情的に怒っても思春期である中学生のお子さまを変えることはほとんどの場合、できません。このことを親は子どもの成長とともに受け入れなくてはいけないのです。「勉強しなさい」と怒ってもそれで子どもが集中して毎日勉強することはないのです。「〇〇高校に絶対に行きなさい」とプレッシャーを与えてもそれで子どもが猛烈に勉強し続けることはないのです。

 

なぜなら、

本人には「どうしてその高校に行きたいか」の理由がないからです。本人が「行きたい。勉強しよう。」と思わなければ何も始まりません。子どもに対する感情的な怒りは親の短期的な欲求を満たすためのはけ口でしかありません。その場合、問題は子どもにあるのではなく親自身が問題を抱えているのです。

 

一番大切なことは、親が「勉強しなさい」とガミガミ言うことではありません。本人に認識させることです。そのために親が出来ることは、じっと「見守る」ことです。子どもが自主的に勉強する瞬間が必ずやってきます。その瞬間を見逃さず、心から「私は感動している」と恥ずかしがらずに親の気持ちを具体的に伝えることです。私(親)が何を嬉しいと感じているかがはっきりと子どもに伝わることで子どもの心に強く印象として残ります。その印象が強ければ強いほど、勉強が習慣になります。

 

成績が上がる最高の方法は自主的にやる勉強です。これに勝るものはありません。

 

【補足】

ここに書いたことは、あくまでもご家庭での親のスタンスです。塾は違います。塾では、勉強の必要性や、勉強の仕方などうるさいぐらいにお子様に話をします。それが塾の役割であり、仕事です。